元フィールド辺境伯領の戦場最前線でオウガは剣を振るっていた。それは鬼気迫るものがあり、近づく者は全て切る捨てる。瞳が、そう語るようにギラギラと光っている。そんなオウガの様子に隣国アリエントの騎士達は恐怖で青ざめた。この人には近づいてはならない、と本能が告げているにも関わらず、国のためにこの命を捧げると決めていた。無駄死にと分かっていも前に突き進んでいかなければならない。それが戦争だ。

 オウガも分かっている。自分の前で血を流す騎士達にも帰りを待つ家族や恋人がいることを……それでも愛する人のため、セリカのため俺は剣を振り下ろし相手の命を奪う。

 無心に剣を振り下ろすオウガの後ろで自国の騎士がまさか、自分に剣を向けてくるなどと思いもしなかった。ドンッという衝撃……何が起こったのか分からなかった。振り向くとオウガは自国の騎士に胸を貫かれていた。

 なっ……。

 味方であるはずの騎士に胸を貫かれたオウガはその場に膝をついた。自分に剣を向けてきた騎士に視線を向けるも、その騎士はすでにその場から姿を消していた。


 どうしてこんなことを?

 スパイでも紛れ込んでいたのか?

 かなり血が流れているが、急所は外れているようだ。

 血を流すオウガの元に味方の騎士が加勢に入り、オウガを救護テントへと連れていく。しかし、テントの中に入ることはできなかった。そこには後方にいるはずのファルロがいたからだ。

「オウガ、怪我をしたのか?」

 驚いた様子もなく、ファルロがオウガに問うた。