なんということだ聖女の力の真実……それは自己犠牲によりなり立つ力。フィールド辺境伯が命を持って娘を守るのも頷ける。今の俺ならセリカを守るため、フィールド辺境伯と同じことをするだろう。聖女の力が自分の命を削るということを知っている人間が、この国に何人いるのだろうか?なぜそれを公表しないのか?要するに王族は聖女を道具としてしか思っていないのだ。

 そう思ったとき、オウガにの心に王族に対しての嫌悪感が生まれ、歯ぎしりがしそうなほど奥歯を強く噛みしめた。

「オウガ、あなたと一緒にいる時間は少ないかもしれない。それでも私はあなの側にいたい」

 自分を見上げるセリカの瞳から涙が宝石のようにキラキラと輝きながらこぼれ落ちる。それをオウガはついばむようにキスをし、そのままセリカの唇に自分の唇を重ねた。