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オウガは深更になっても寝付くことが出来ず、夜空にぽっかりと浮かんだ月を眺めていた。月は白銀に光輝きセリカ様を思わせる。
セリカ様はファルロ殿下に抱きしめられ、俺に助けを求めるように手を伸ばしてきた。しかし俺はその手を取るかとが出来なかった。
俺が目を逸らした瞬間のセリカ様の悲しそうな顔が目に焼き付いている。
俺にはどうすることも出来ない。
自分の力のなさに落胆する。
王族には逆らえない。俺は騎士なのだから……。
この仕事に就いたとき誓ったんだ。俺は王族を守り、この国を守り、人々を守ると。
王族を守る……。
それなのに俺には王族よりも、この国よりも、守りたいものが出来てしまった。
「セリカ様……」
オウガの顔が悲痛に歪む。
俺は、どうすればあなたを守ることが出来るのだろうか?
俺だけが知っている、あの優しい微笑みを守りたい。
考えろ。どうすればあの人を守ることが出来るかを……。
オウガは白銀の月を見つめながら施策を重ね思案に暮れるのだった。


