あの日ナットを食べ終えると、セリカの瞳は炎をやどした赤い色に戻ってしまった。それをオウガは残念に思い、そしてまた復讐心が強くなってしまったのか?と心配していたが、それは杞憂だった。



 なぜなら……。



 今、セリカはオウガと共に中庭の東屋でのんびりと過ごしていた。

「ねえオウガ……それもうやめない?」

「ん?何がですか?」

 いや、お前分かっているだろう。っと思いつつも、セリカはオウガから差し出された手にある、クッキーを口に入れた。あれ以来、オウガはセリカの口に食べ物を運ぶ。手ずから食べさせるオウガに、セリカは自分が雛にでもなってしまったのかと錯覚するほどだ。しかし、美味しい物には罪はないと言い聞かせ、口に運ばれてきた物をハムハムとほおばっている。

 それをオウガは嬉しそうに微笑み、満足そうに見つめてくる。どうしてこんなにオウガが嬉しそうなのかというと、私の瞳はオウガと二人きりの時だけは紫色へと変わるのだ。それはオウガへの好意の表れで、それだけでオウガは満足そうだった。

 私はといえば、こんなダダ漏れの好意の表し方に、恥ずかしさしかない。

 なんなのこれは、嫌いと言ったところで何の意味もない。だからか、どんなにオウガに悪態をつこうが、ワガママを言おうが何の効果もない。ただ嬉しそうにニコニコするだけのオウガに、セリカは頬を膨らませた。

「もう!!オウガなんて大嫌い!!」

「ん?ホントに嫌いですか?」


「ぐっ……嫌いじゃない」


「では?」



 何を言ってもニコニコするだけのオウガに、セリカは更に頬を膨らませると、ドレスの裾を握りしめ、体をプルプル震わせながらポツリと呟いた。





「……きっ……すき……」





 セリカの告白に破顔するオウガ。その嬉しそうな表情にセリカの心臓は激しい、動悸にもにた動きを開始する。

 

 そんな顔反則よ!!

 
 真っ赤な顔でプルプルと震えているセリカに、オウガが追い打ちをかける。


「もう一度お願いできますか?」


 ぐっ……んーー!!


 こうなったらやけくそよ!!



「大好きって言ってるじゃない。バカーー!!」