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 オウガは自分の腕の中で意識を手放したセリカを見つめた。

 セリカ様はずっと一人で戦ってきたのか……。

 たった一人で……。

 何事もなかったように眠るセリカを、オウガは両膝の裏に腕を差し入れ抱きかかえた。

 かっ……軽い。

 ドレスの重さがあるにも関わらず、あまりの軽さに驚愕した。腰の細さ手足の細さも心配するほどだ。オウガはセリカの部屋の扉をセリカを抱きかかえたまま器用に開け、天蓋付きベッドに横にさせた。

 自分の話を誰も信じないと泣いていたセリカ様……。

 確かに耳を疑うような信じられない話だった。王を疑うなど不敬にも等しい。しかし、こんな風に感情を露わにするセリカを見てしまえば、あの話が嘘とも思えない。

 あどけない表情でベッドで眠るセリカに視線を落とすと、先ほどまで怒りで震えていたとは思えないほど穏やかに眠っていた。

 折れてしまいそうなほど細いこの体で、あなたは一人戦っていた。

 俺はこんなにも強く、美しい女性は見たことがない。

 オウガはセリカの前髪をそっと払うとその額に優しく口づけを落とした。





「悪魔のギフト……」

 あれはどういう意味なのか?

 オウガの中にまた一つ、疑問を残してセリカの部屋を後にした。