セリカから発せられる殺意にファルロは額から汗を流し顔面を蒼白にさせる。セリカの体から見えない電流のような物を感じ、ファルロの肌をヒリつかせた。

 聖女を怒らせてはならないと本能が危険を知らせる。

「セ……セリカ嬢、願いがあるなら何でも聞く。だから……」

「何でも聞いて下さる?」

 セリカの眉がピクりと反応し、体から殺気が溢れ出すと、美しい白銀の髪を揺らした。

「それなら、ファルロ殿下……あなたの手で王を殺してくださらない?王妃はすで亡くなられているので無理ですけど」


「……なっ、何を言っているのだ」

ファルロより先に声を上げたのはファルロの後ろに控えていた宰相のドルクだった。

「聖女そなたは何を言っているのかわかっているのか?この様な不敬許されるとでも?」

「部外者はうるさいわね。私はファルロ殿下と話をしているのよ」

 セリカの怒りが威圧となって宰相のドルクに襲いかかる。恐ろしいほどの威圧にドルクは、その場に腰を抜かして座り込んだ。立っていられないほどの威圧に、回りで様子を見守っていた人々も、一人、また一人とその場に座り込んでいく。


「ファルロ殿下、人を殺せても自分の両親は殺せませんか?」

 セリカが冷ややかに笑う。






 絶対零度の微笑みで……。