離してよ、牙城くん。





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「うあ〜ん……、リアにフラれたよぉぉ……ぐずっ」


「花葉……、鼻水出てるよ。落ち着いて」




「これが落ち着けるか!!ハンカチ何枚あっても足りないし……」




土曜日のお昼3時。



今日もいつもとおなじく、お母さんも七々ちゃんもいない家でのんびり遅めの昼食をとろうとしていたところだった。

なに食べようかな、と冷蔵庫を開けた、
……ほんとにそのとき。




スマホが音を鳴らし、どうやら電話がきたようだなぁ なにかなぁ……と耳に当てた、んだけど。





『も''も''〜〜っっ!!!!』




鼓膜が破れそうなほど大きな涙声で、花葉がそう叫んだのだ。



その狂乱っぷりに、なにかあったと察したわたしは急いで近くの花葉のうちへ走っていった……のが、はじまりだった。