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「が、牙城くん、そろそろ降ろしてもらえないかな……?」





ふたりで(わたしは牙城くんに抱えられて)、雨が止んで晴れた夜空の下、外に出たのはいいものの。


いつまでもお姫様抱っこを続ける牙城くんに、おそるおそる声をかけた。





さすがに牙城くんの腕が心配だし、恥ずかしいし。

降ろしてもらえると助かりマス、と伝えたけれど、牙城くんは聞き耳を持ってくれない。




「やだね。百々ちゃんは俺のって見せつけてんの」


「そんなことしなくても……」




「する必要はあるよ。俺、片想いだから、どーしても焦んの」





威嚇だよ威嚇、と平然と答える彼に、そのために話があるんだよ……と目を瞑る。



もう……、片想いじゃ、ないのに。

わたし、……やっと、自分の気持ちに気づけたのに。




牙城くんが、離してくれない。

それならば。



……自分で降りるのみ。