.
「だからさあ……、俺、まじで景野ゆるせねえんだよなあ?」
懐かしい回想から目を覚ますと、そんな声が聞こえた。
カツカツと景野さんのまえに歩み寄り、ずいっと近づく牙城くん。
さきほどまで潤ませていた瞳は、いつのまにかメラメラと燃えていて、景野さんの表情もピシッと固まったのがわかった。
「……なにが許せないのかな? 牙城クン」
めんどくさい、とあからさまに顔をしかめる景野さんと対照的に、牙城くんは黒い笑みを浮かべている。
このふたりが仲悪いのは……、なんとなくわかる。
波長は合うのに……、お互いがお互いを敵視しているというか。
歩み寄ろうという態度がまったくないというか……。
不穏な空気が流れ、わたしと七々ちゃんはいったん離れる。
そのあいだ、七々ちゃんは縛られたわたしの腕と脚のロープをせっせと外してくれた。



