離してよ、牙城くん。




ガジョウくんは、わたしのカーディガンを羽織り直し、雨に打たれながら言う。




『ありがとう、ももちゃん』




雨の音がうるさい中。

やけに彼の声だけは耳に残り、忘れられなかった。



そして、いいえ、とわたしが返すまえに、ガジョウくんは立ちあがって去って行ってしまったんだ。













その後、もう会えないだろうと思っていたころになって、わたしのクラスに転入生がやってきた。



名は、牙城渚くん。

まさに、あのときの銀髪の彼。


転入早々、男女ともに騒がれている有名人だった牙城くんは、あのときとちがって、とても元気そうで。


あぜんとしているわたしに、牙城くんは笑って言ったんだ。







『俺、百々ちゃんに会いに来たんだよね』





……それから、牙城くんによる溺愛がはじまったので、ある。