離してよ、牙城くん。




いつも常備していて、花葉には『女子力の塊!』と言われる、かばんのなかにある絆創膏をひとつ取り出した。



ひとつじゃ……、足りないかも。

うーん……、じゃあ、いくついる?



悩んだあげく、ぜったい不必要な量、……持っていたぜんぶを彼に押しつけた。




これにはさすがの彼も驚いたようで、目を見張っていた。


そうこうしているあいだも、絆創膏も雨に濡れていき、使いものにならなくなってしまう。



もちろん、彼もびしょびしょで。

わたしたちふたりだけが異空間にいるような、不思議な感覚に陥ってしまう。



……なんで、こんなところにいたのか。

こぶしに血が滲んでいる理由とか。


聞こうとは、まったく思わなかったんだ。




『……わたしので、ごめんなさい』