離してよ、牙城くん。




わたしの声に、なんの反応も示さない彼。

……だと思いきや、ぴくりと動いて、ゆっくりとわたしを見上げた。



透き通るほどの透明な瞳。

見る者を魅了する桃花眼。


美麗で、端正な顔立ち。


こんなにも綺麗な人が、この世に存在するのかと疑うほど。

銀髪が雨を弾いているようだった。



……目を細めてわたしをじっと見つめる彼は、
いま思えば、七々ちゃんにそっくりなわたしに困惑していたのだと思う。







『……』





流れる沈黙。

わかっていたけれど、口を開かない彼に、少しだけ傷つく。




そのあいだにも彼は雨に打たれ、本気で風邪をひいちゃう、と焦ってしまう。





『あっ……、ばんそうこう、……よければ使ってください』





いらない、って言われるかな。


お節介って思うかな。




それでもよかった。

怖く見えて、泣きそうな彼を、放っておくわけがなかったの。