離してよ、牙城くん。





手が……、血で滲んでいる。


立ち上がる気配もなく、近づいたことに気づいているだろうけど、彼はわたしを見ようともしない。


どうしたものか……、と、頭を抱えた。




……いっそのこと、声をかける?


でも、無視されたら?

睨まれたら?

もしかしたら、危ないことをされるかもしれない。



それなら、もう気にせず帰る……?

そのほうが、安全ではある。


七々ちゃんなら、……こんなときどうするんだろうなあ。

不良になった七々ちゃんでも、見捨てたりしないよね……。





考えだすと止まらなくて。

……ええいっ!と、すべての思考を消した。




よし、とりあえず、話しかけよう。

それで、無事だったら、さっさと帰ろう。