離してよ、牙城くん。




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ざあざあと降る雨の中。


参考書を買いに、本屋へ行った帰り道のこと。



春になりかけの、不安定な天気模様。

傘をさして足早に歩いている人が多いのに、路地裏で、銀髪の男の人がびしょびしょの地面にしゃがみこんでいるのが見えたんだ。




傷だらけで雨に打たれる彼は、漫画で出てくるような、なんていうか……。

見るからに……、ふりょう、ってやつだった。




ぜったいあぶないひとだ……。

近寄らないほうが、いいよね……?



都会というものは寂しいもので、だれも彼に声をかけようとはしない。

ますます雨がひどくなるにも関わらず、銀髪の彼はまったく身動きひとつしなかった。




……ひとまず、無事かどうかを、確認しよう。


小学生みたいに何かあったときのために持っている防犯ブザーを握りしめ、そっと地面に座る彼に近寄った。