離してよ、牙城くん。





その日、ナギは来なかった。


いちばんいてほしいときに、そばにいなかった。


あとから知ったのは、その日、ナギは冬風邪をひいていたらしい。






でも、ボロボロのわたしに手を伸ばしたのは……、祥華だったんだ。







「ナナなら大丈夫。きっと、仲直りできるよ」


「僕なら、きみの彼氏よりも、もっと多くの事情を知っている。辛いときは泣いて」





弱っているときに優しい言葉をかけられると、甘い蜜を求める蜂のように、傾いてしまう。


ダメだ、とわかっていても、ナギへの気持ちが薄れて、祥華への気持ちが……昂ってしまったの。




正直、辛かった。


自分で夜の世界に入った理由を言わない選択肢を選んだものの、大好きな百々に嫌悪され、避けられ、お母さんにも気を遣われることに、
自分はいったい何をしたかったのか、わからなくなっていたんだと思う。