離してよ、牙城くん。




声をかけたはいいものの。

……何を、話せばいいんだろう。




話しかけておいて、やっぱりいいです……は、さすがに失礼だよね。




盗み見していたことはとっくにバレてしまったし、いまさら後には引けないことはわかっていた。

どうしよう、と頭をフル回転させた結果、出てきた言葉は。




「……わたし、合気道、習ってるんですけど」




……ちがう!

そんなこと、言いたかったんじゃないのに。




ほら、彼も予想外すぎたのか、ぽかんとしてるし。


ああもう……っ、どうしたらいいの?





泣く泣く話を続けるほかなくなったわたしは、ちらりと銀髪の彼を眺め、再度口を開いた。




「受け身とか、かわし方とか……動作ひとつひとつが綺麗で、感心しました」




……これは、本当。


本当に伝えたかったことではないけれど、いま伝えたことは本心だった。