離してよ、牙城くん。





しかし、彼のまわりに十何人といる、金属バットや何やらを持った男の人たち。


いまにも吠えそうな、野蛮な人だらけだ。




不良、なんてかわいいものじゃない。




俗に言う、暴走族……だということは、聞かなくてもわかってしまった。


このあたりにはふたつの族が争っている、ということはだれかに一度、聞いたことがあったため、案外すんなり受け入れる。



そのときはひとごとだからよかったものの。

こんなところで、まさか自分が会ってしまうなんて。




自分にしか聞こえないほど小さく、ため息をつく。



……大変なところに居合わせてしまったのかもしれない。





夜中にあまり働かない脳みそを動かしながら、身を案じ、近くにあった電柱のうらにさっと隠れる。


ほっと息を細く吐き出しながら、頭を抱えた。