彼の唇に、自分の唇を重ねた。
ほんの一瞬。
恥ずかしいから、コンマ何秒しか触れ合っていないけれど、牙城くんのペースを乱すには充分で。
「……しぬ、」
途端に後ろに倒れた牙城くん。
少し赤くなった顔に腕を乗せて天を仰いでいる。
淡路くんと花葉は空気を読んでくれたのか、屋上にはもういなかった。
ふたりきり。
甘い空気は、不意打ちのキスのせいで、作られてしまっている。
それにしても。
こんなに照れている牙城くん……、はじめてじゃない?
ドクドクと鼓動はいつものようにうるさいけれど、それ以上に嬉しかった。
もしかして……、わたし、牙城くんに勝てた?
「がじょーくーん……」
ちょん、と頰を突いてみる。
調子に乗るのは簡単で。
にやにやとゆるむ頰を隠さないでいたら。
「──── わわっ」