離してよ、牙城くん。




椎名さんは、思ったよりも誠実な人なのかもしれない。


なんといっても有名な暴走族の副総長さまだけに、女の子関係はきちんとしているらしい。




わたしたち一般人には、【狼龍】は謎に包まれている組織だけれど、非道な族ではないことは知っている。


牙城くんと椎名さんがツートップだもの。

わるい組織なわけがない。



きっと牙城くんにそんなことを伝えれば、『甘ったるいよ』なんてバカにされるんだろうけど、わたしはそう信じているから問題ない。


わたしもいつか、【狼龍】のみんなと仲良くできる日が来るといいなあ、なんて思いながら花葉の話を聞く。




「でもね、最近椎名くん忙しいらしくて、あまり連絡できないんだよね……」


「……そうなの?」




「うん。族関係で何かあったらしいよ」