離してよ、牙城くん。





「抵抗しないってことは、気持ちいーの?
それとも……、俺が怖い?」




後者は、ちがう。

だけど、艶っぽく自分の唇を舐める彼は、わたしなんかが手の届かないほど、煌びやかで美しかった。





「百々ちゃんは俺のだってこと、頭だけでなくて身体にも染み込ませとかないとね」





わたしは、牙城くんに囚われてから、牙城くんしか見えなかった。


ほかの男の人なんて知らないぶん、これが普通なんだと。




それでよかった。

わたしがもし、牙城くんじゃないひとと先に出会っていたら。





彼から、彼の溺愛から、逃げていたかもしれない。