離してよ、牙城くん。




顔を赤くしてうつむく花葉に、椎名さんは笑ってる。



「いーよいーよ。花葉チャンおもしれーじゃん?」




自分の族の総長をわるく言われても、気にしないようだ。

寛大な心だって持っている。




花葉はけっこうはっきり物言うタイプだから、それを笑って受け入れてくれる椎名さんとは相性がいいように思える。





「ナギくんのお気に入りの女の子のことくらいは、俺は知ってるよって話」


「……えっ牙城くん、わたしのこと、言ってるんでしょうか?」



聞き捨てならない。

もしかしてもしかすると、【狼龍】の中で、わたしの存在は知れ渡ってたり……する?



自意識過剰かもしれないけれど、おそるおそる尋ねたわたしに、椎名さんは「あーちがうよ?」と、ヒラヒラと手を横に振った。