離してよ、牙城くん。




「え、百々、椎名くんと知り合い?!」



唖然と声を上げる花葉。


驚くのも無理はない。

気になる人、しかも【狼龍】の副総長と名高い彼が、わたしの名前を呼んだのだから。



そこで、はたと思考を停止する。



わたしたち、知り合い……なのかな。


だって、わたし、椎名さんと会ったことはない。


牙城くん繋がりで、一言二言、電話で会話しただけ。





それなのに、わたしがあのときの女だってわかった椎名さんは、さすがだと思う。






「あー、なんていうかなあ。そっちの高校にナギくんいるっしょ? 牙城渚」



花葉にいちから説明する椎名さん。

面倒見はいいらしい。





「あ、います! 百々にベタベタくっつく迷惑極まりない男!」


「あっは、花葉チャンけっこう言うねえ?」




「あ、いや、つい……」