離してよ、牙城くん。




あんなに瞳は燃えているのに、わたしの頰にそっと触れる手は驚くほど優しかった。



大きくて、あたたかい手。

触れられるだけで牙城くんに抱きしめられたような安心感に、再び涙を流す。




……なんで、牙城くんはこんなにもわたしを甘やかしてくれるんだろう。

ほかのだれを敵に回しても、わたしを守ろうとする牙城くん。



少しでも、そんな彼を怖いと思った自分を引っ叩きたかった。



わたしには、怒っている牙城くんは泣きそうな瞳をしているようにも見えた。





「痛かっ、た……っ、痛かったよ牙城くん……っ」





弱音なんて、吐きたくなくて。


わたしも、七々ちゃんのように強く生きたかったのに。




わたしは、牙城くんがいないと、不安で不安で仕方がないの。