「と、とびらっ……!!」
涙が一瞬にして引っ込んだ。
牙城くんが壊したであろう、扉を呆然と見つめる。
……学校のもの、壊したら大変なことになるのに。
目を見開いて顔を青くしていると、牙城くんは、はーっと安堵したような呆れたようなため息をついた。
「いや、百々ちゃん違えだろ。
いまは、扉のことより百々ちゃんの心配が最優先」
「うっ……、でも」
当たり前のように言う彼のまっすぐさに、言葉を詰まらせる。
「わるいけど、俺、百々ちゃんのためならなんだってするから」
「……っ」
嬉しい。……でも、だめだよ牙城くん。
わたしのためでも、なんでも、悪いことはしちゃいけない。
牙城くんの噂が、少しでもいいものになればいいなって思ってるから。
だから、自分を大切にして、わたしを守りすぎないでほしいの。
牙城くんは、わたしの髪に触れながら、冷たい声で呟いた。
「────で、俺の百々ちゃん泣かした奴、どこのどいつ?」



