離してよ、牙城くん。





泣くなよ、って言われた。

でも、……無理だもん。



牙城くんがわたしを心配して、涙を拭いてくれるのが、すごく嬉しいから。





佐藤さんたちにもう近づくなって言われたのに、わたしって……サイテーだ。





通話は切れて、ツーツーという無機質な音だけが耳に残る。


教室の隅っこでうずくまる。




わたし……、これから牙城くんと離れられる?


もっとひどいことされても、それでも……彼のとなりにいられるのかな。





それに……、“あの人”って、だれのことなんだろう。



悶々とした思考回路で、考え込む。

答えは出なくて、もやもやした気持ちのまま、彼を待っていると。






「────っ、ももちゃん」




突然、ドンドン、と激しく扉が揺らされた。





……牙城くん、だ。