離してよ、牙城くん。



まさか、空き教室に閉じ込められてました、だなんて言えず、なんとか声のトーンをあげて取り繕う。



勘のいい、牙城くんにバレたら……ダメ。



「……う、あのね、ぜんぜんおなかが治らなくて……トイレにいるんだ。だ、か──」



だから、大丈夫。

そう言おうと思ったのに……。




『────やめろ、嘘つくな』





牙城くんは、怒気をふくんだ声でわたしの言葉の続きを制した。


あまりにも彼の低い声が怖くて、
でも、ここで怯んだらいけないと思い、なんとか言葉を発する。




「……っうそじゃ、ない」




どうして、牙城くんはわたしのことはすべでお見通しなんだろう。


わたしは、きみをまったく知らないのに。