離してよ、牙城くん。




ぐずぐずと泣き続け、教室の隅っこで頰と心の痛みに耐えていると。






────プルルッ、プルル




「わっ……」







ポケットに入れていたスマホが鳴り出し、その存在にはじめて気づいた。


助けを呼べる状況であったのにも関わらず、泣き続けた自分自身が少し恥ずかしくなる。





慌てて取り出すと、そこには牙城くんの名前が表示されていて。


電話、だ……。

出たいような、出たくないような。



ためらいながら、通話ボタンを押した。





『……百々ちゃん、いまどこ』




スマホ越しから聞こえた牙城くんの声が、……すごく怒っている。


あまりにも低い声に、ドキッとした。