離してよ、牙城くん。




「でも……っ」




抗おうとした佐藤さんは、黙って首を横に振る2人に、ぐっと言葉を詰まらせた。


わたしを庇ったわけではない。

佐藤さんを止めたわけだけれど、本当は安堵した。




当の佐藤さんは少し熱が引いたのか、声のトーンが変わった。





「わたしはっ、……牙城くんのとなりにいるのは、あの人だから許せたの」


「……あの、人?」



あの人って、だれのこと……?



「……え、まさか、朝倉さん知らないの?」



心底驚いたというように目を見開かせる佐藤さんに、心にひゅーっと冷たい風が吹いたように感じる。


……わたしの、知らない牙城くんの話。




「えーうっそ、それは気の毒かも……ねえ?」