離してよ、牙城くん。



パンッ、と空気が割れたような音がなり、頭が真っ白になる。



頰が、……ジンジンする。


叩かれた、そう感じた瞬間、思わず涙が出そうになった。





「牙城くんのこと、友だちだなんて言わないでよ……っ!」



泣きはらした目を真っ赤にさせ、詰め寄ってくる佐藤さん。


彼女に叩かれた頰に手を当て、呆然としているわたしに、さらに拍車をかける。





「牙城くんに近づきたくても近づけなくて。友だちにすら、なれないわたしたちの気持ち、朝倉さんにわかる?!」



「……っ」





軽率だった。


わたしは、牙城くんに与えられている席にのうのうと座っているって。


いままで、こんなふうに恨まれなかったほうがおかしかったんだって。





牙城くんがどれほどひとを魅了しているのか……改めて、気づいたんだ。