離してよ、牙城くん。




じわっと涙を浮かべ、少し声を荒げた佐藤さん。


後ろにいる2人は、佐藤さんの付き添いなのか、いまにも泣き出しそうな彼女におろおろしている。



……どうして、わたしなの、かあ。




そんなの、わたしも聞きたかった。


牙城くんが、なぜ、こんなにもわたしに構うのか。

わたしに、どんな気持ちを抱いているのか。


彼が、わたしに執着する理由とか。



……わたしは、ぜんぶ、知らない。






でも、あの日、牙城くんと出会った日。





────『…………、なまえ、なに』


───『えっ……、あ、アサクラ、モモです。百々』



────『……もも、ちゃん』






わたしがこんなにも惹かれるのは、牙城くんしか、いないと思ったんだ。