【完】狂犬は欲望中毒。





住んでいるマンションが近いからと、左和季君は私をバイクに乗せずにマンションの下まで送ってくれた。


多分、怖がっている私に気遣って、エンジン音を聞かせないようにしてくれたんだと思う。


左和季君って自由人に見えて、実はものすごく優しいから……そのギャップに毎回ドキドキさせられていること、本人気付いてるのかな?



「左和季君送ってくれてありがとう」


「……あぁ。悪かったな」


「なんで左和季君が謝るの。
 警戒心がなかった私の責任だよ?
 こんな状況って知ってて、ひとりで帰って。
 ……ごめんね」

「……」



沈黙が流れる。


お互い罪悪感で何を話せばいいのか分からない重い空気を斬るように、左和季君が「じゃあな」と一言だけ言って私に背中を向ける。




「……っ」



左和季君が一歩踏み出す度に、さっきの恐怖が甦ってくる。



嫌だ。


行ってほしくない。



ひとりにしないで。