「わざわざ同行してくるなんて、もしかして俺のこと好きなんですか?」
なんて冗談を私の耳元で言う木嶋さんの事は完全に無視しながら課長の後に続く。
そうすれば、連れてこられたのは厳格な雰囲気が漂う社長室だった。
その時点で何だか嫌な予感はしていたけれど、その予感は見事に的中していた。
「先程、取引先から苦情の電話があってね。」
社長の重々しい声が静寂な部屋に響き渡る。
「木嶋くん、どうやら君宛ての苦情だったみたいだ」
「……どのような苦情でしたでしょうか」
そういう内容の事を言われる、ということを察知していたのだろう。木嶋さんはいつもとは違う落ち着いた声色でそう社長に問いかけた。
「君の作成した資料に不備があったようだ。社員から、君が担当をしたと聞いた」



