だけど、それは木嶋さんの大きな手によって阻止されることとなる。
「木嶋さん…やめて、」
手を払い除けようとするけれど、逆に隙をつかれて携帯を奪われてしまう。
「お願い、出させて」
そう懇願するも、木嶋さんは表情をびくりとも変えず、私をただジッと見つめた。
そして急に私の腰に手を回すと、グイッと私を引き寄せた。
冷たくて、でもどこか切なげな木嶋さんの視線と私の視線がぶつかり合う。
着信音が未だ鳴り響く中、木嶋さんは徐に口を開いた。
「出ないで」
「……っ」
「今は俺と浮気中でしょ。ほかの男からの電話になんか出ないで」
吸い込まれてしまいそうなほど真っ直ぐな視線に捉えられて動けない。



