「……は、何言って……」

「だって明里さん浮気されてるんでしょ?」


あまりにもストレートな言葉に胸が痛む。


「だから何?私が浮気されてるから、私も浮気したらいいって?」

「はい」


平気でそんなことを言って退ける木嶋さんに虫唾が走る。

そんな人だと思わなかったから、尚更ショックだ。けれどそれは、私が勝手にいい人だと思い込んでいただけ。

これが本性なんだ。


「悪いけど、私は浮気なんかしない。…ていうか、まだ彼氏が本当に浮気してるかどうかなんてわからないから。」


私は木嶋さんをキツく睨みつけた。

そんな私を数秒真っ直ぐ見つめた後、木嶋さんは私に一言「わかりました」と言った後、携帯を差し出した。

私はその携帯を借りると、急いで所属オフィスへと連絡をした。そして、それからようやく一時間後、書物庫と気まずい雰囲気から脱出することが出来た。


その日は、木嶋さんとは一切視線を合わすことなく、淡々と教育係としての業務を終えた。


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