「……わたし……っ、思い出したの、ぜんぶ」

「……えっ?」


私の言葉に木嶋さんは大きく目を見開いた。


「何度も、もう会えないかもって思った。電話も繋がらないし」


私の声に木嶋さんは「すみません」と呟いた後、「でも」と言葉を続けた。


「思い出したんなら尚更、俺になんか会いたくないんじゃ」


そう言って俯いた木嶋さんの言葉を遮るようにして、私を言葉を紡いだ。


「私ね、ずっと…ずっと木嶋さんに会いたくて。今日ここに来たのも、雪から教えて貰って会いに来たの」

「雪、から?」

「うん。落ち込んだ時、木嶋さんはよくここにいるからって」


そう言うと木嶋さんは何だか少し嬉しそうに笑った。


「わたし、木嶋さんがすき」


俯いていた顔がその言葉で勢いよく私を正面にとらえた。


「……え!?ね、熱にやられてるんじゃ」


そう言ってまた私のおでこに手を添えた木嶋さんに私はつい笑いを零してしまった。