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羞恥心に駆られながらも、急いで支度をすると、もう既に玄関で暁さんは待っていた。


「ちょっと大きいけど我慢して」と手渡されたのは、シンプルな黒いサンダル。

ありがとうございます、と言えば、暁さんはまたニコリと頬を緩めた。




外に出ると、暖かな日差しが顔を照らした。


今日が土曜日で良かったと改めて思う。
もし仕事の日だったら終わってたなぁ。

なんて呑気に考えながら、慣れた足取りの暁さんに連れられて、小さくて可愛らしい喫茶店へやって来た。

外観から年季が感じられるけれど、それでいておしゃれにも感じられる。
それは内装も然り。

落ち着いた雰囲気のある喫茶店だ。


「家に泊まらせて頂いた上に、朝ごはんまで奢って頂いて……ほんとすみません」


本当に何度も思うが、私はとんだ迷惑女だ。


「大丈夫だって」


そう言って笑う暁さんは本当に親切だ。

改めて明るい場所で面と向かって話をすると、暁さんがえらく端正な顔立ちをしていることに気づく。

サラサラの黒髪に、鼻筋の通った鼻。奥二重の切れ長の目に、長すぎるまつ毛。そんな整いに整ったパーツは、豆粒のように小さい顔に見事なバランスで並んでいる。

……これぞ〝ザ・美少年〟だ。


そう思いながらボーッと暁さんを見つめていた矢先、暁さんが不意に口を開いた。


「そういえば、お互い自己紹介まだだったよね?」

「あ…確かに」


金髪の女の人が「暁」って叫んでたから、なんとなく名前は分かるけど、本当にお互い何も知らない状態だったということに改めて気付かされる。


「じゃあ、まず俺から。木嶋 暁(キシマ アカツキ)。なんと明後日から社会人です。」


やっぱり20代前半だったんだなぁ、なんて思いながら私も続けて自己紹介をする。