浮気 × 浮気



「手を、繋ぎたい」

「……え?」

「明里と、手を繋いで歩きたいんだ」


なんてものすごく真面目な顔で言い張るものだから、なんだか笑ってしまう。

そんな緊張して言わなくていいのに。


私は差し出された少し震えた陸の手をギュッと握った。


「そんなの普通に言ってくれたらいいのに!」


陸の顔をのぞき込むようにしてそう明るくいい放てば、陸は安心した表情を浮かべた。

そんな陸に何だか嬉しくなって、私までホッとしたような何だか不思議な気持ちになる。


「私たち6年目も付き合ってるんだよ?今更、手を繋ぐことに緊張しないでよ」


そう軽く言ってのける私とは裏腹に、陸はまるで独り言のように小さく呟いた。


「俺にとっては…当たり前じゃないから」

「え?」


陸の言ってる意味がよく分からなかったけれど、何だかこれ以上踏み込んだら行けないような気がして、私は口を閉ざした。