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「待たせて悪かったな」
会社前で待っていた私に駆け足で近寄ってきた陸にその言葉と同時に肩を叩かれた。
「全然!お疲れ様!遅くまで大変だったね」
そう言って陸に笑いかけると、「ありがとう」と言葉が返ってきた。
そんな陸に「じゃぁ行こっか」と告げ、足を進めようとしたその時。
唐突に腕を優しく掴まれ、足を止めた。
「どうしたの?」
そう陸の方へ振り向き、問いかける。
相変わらず、何を考えているのか分からない陸の表情を私はじっと見つめた。
そうして徐に腕を開放されたかと思えば、やんわりと差し出された掌に自然と視線がいく。
「え?」と間抜けな声を漏らしながら、私は再び陸の顔へ視線を戻すと、陸の真剣な眼差しに射抜かれた。



