私は両手でやんわりと木嶋さんの胸を押した。
そして目を合わせることなく、私はつぶやくようにして言葉を紡いだ。
「…ごめん、私今はちょっとひとりになりたいや」
そう言って木嶋さんにそっと背を向ければ、今度は後ろから覆うように抱きしめられた。
「…………いやだ、」
「………っ、」
私を包み込む優しい温もりと、必死な声。
私はそんな木嶋さんの腕を払い除けることが出来なかった。
私はまるで木嶋さんの温もりを確かめるように、震える手をゆっくりと木嶋さんの腕に添えた。
木嶋さんの温もりは妙に落ち着いてしまう。
私が辛い時、苦しい時……いつもそばにいてくれるヒーローのような人だ。
「明里さん」
ふと名前を呼ばれ、私は体をびくりとさせた。