そんな私の発言に秋本陸は訝しげな表情を見せた。

そんな秋本陸の様子に私は確信する。

……コイツは、私の事を何にも覚えていないと。


私はキュッと唇を噛み締めた後、再び口を開いた。


「大学時代、あんなに仲良くしてくれたのに忘れたんだ?」

「大学、時代…?」

「テニス一緒に頑張ったよね」


私のその言葉を耳にした瞬間、秋本陸はハッとした表情で私を捉えた。


「お前………あの、山下雪…?」


驚きを隠せない様子の秋本陸に私はフッと鼻で笑った。

……でも、今更思い出しても遅いのだ。

どうせなら、私に会ったあの日に思い出して欲しかったよ。