________♪♪
私のすぐ隣から着信音が鳴り響いた。
「ごめん、会社から電話だ。……ちょっと席外す」
そう言って立ち上がったのは、陸。
その後すぐ私に視線をやった陸は、「すぐ戻る」と私に口パクした後、個室を出て行った。
そんな陸を見送ったあと、私たちの間に沈黙が訪れた。
カチカチと時計の秒針の音だけが、やけにうるさく部屋に響く。
そんな中、1番初めに口を切ったのは木嶋さんの低い声だった。
「山下さんは、…他の人の恋愛事情聞いてて楽しいんですか?」
「……どうして?」
「いや、純粋に楽しいのかなって思って」
お互いに顔を見合わせて話しているもんだから、二人の横顔しかみえず、はっきりとした表情は読み取れないけれど、二人の間に流れている空気もまた、いいものではなさそうだった。
「楽しいよ。楽しいから聞いてるんだよ。」
笑っているようで笑っていない雪の目は、信じられないほど色がない。



