鏡を見ながら髪を整え、私は皆のいるリビングへと向かった。
「沙奈、やっと起きたか。昨日は大丈夫だったか?
大翔からは、発作はなかったって聞いたけど。」
「うん。大丈夫だったよ。」
「紫苑、沙奈がいなくて寂しい気持ちを隠すために、昨日の夜はソワソワしてたよな。」
「翔太、それは言わない約束だろ!」
焦った様に紫苑は、翔太の口を片手で塞いだ。
「だけど、そろそろ妹離れしないとですよ。
沙奈は今、大人の階段を昇ってるんですから。
ねっ、沙奈。」
「音羽、あまり変な言い方は…」
大人の階段って何よ。
思わず、突っ込みをいれたくなった。
「沙奈、今度音羽と一緒にサッカーの試合見においでよ。
高校3年の夏の大会最後だからさ。
グラウンドは暑いけど、観客席は屋根もあるからさ。」
瑛人は、サッカー部のキャプテンでもあり部長にもなった。
そして、音羽もサッカー部のマネージャーをやっている。
「大翔先生、いいでしょう?」
「ああ。だけど、沙奈の体調見てかな。」
「瑛人、その大会はいつなの?」
急な瑛人からの誘いは嬉しいけど、簡単に返事はできない。
「来週の土曜日。まあ、来られたらでいいからな。」
「うん。診察の日でもないから大丈夫。」
「やったー!」
瑛人は、嬉しそうに私の手を握った。
「だから、沙奈の体調次第だからな。」
そんなやり取りをしていると、キッチンに立っていた大翔先生は、私の元へ来て瑛人の手を解いた。
大翔先生は目の色が変わったような気がした。
「瑛人君。いくら幼なじみとはいえ沙奈に軽々しく触らないでくれないかな。」
「あっ、ごめんなさい。つい。」
瑛人は、大翔先生との繋がりもあまりないから私達の関係性がよく分かっていない。
瑛人は幼なじみだから、こういうことはよくやられる。
瑛人を恋愛感情で見たことは無いから、あまり気にはしていないけど…。
私が、嫌がってるって思われているとしたら瑛人にも申し訳ない。
「大翔先生?」
張り詰めたこの空気に耐えきれず、思わず私は大翔先生の名前を呼んでいた。
「沙奈、こっちにおいで。」
それから、優しい眼差しへと変わり私を自分の元へ引き寄せた。
「ごめん。大人気なかった。
沙奈の体調の面も心配だから、その日は俺も一緒に行っていいかな?」
「はい、大丈夫です。」
大翔先生が一言添えてから、瑛人の緊張の糸が緩んだ。
「沙奈、大翔先生のことちゃんと大切にしないとね。」
音羽は、耳元でこっそりと話す。
「瑛人も、もう私も沙奈も高校生なんだからボディタッチは気をつけてね。」
「分かった分かった。ごめんな、沙奈。」
「謝らなくて大丈夫だよ。」
「さあ、そろそろバーベキュー始めるぞ。」
紫苑は、外でバーベキューの準備をして私達に声をかけた。


