「あんな格好いい人と一緒にいて、好きになっちゃわない?」
 その質問が出た時には、俺が固まってしまった。どうも俺はこういうのが上手くやれない。彼女たちの視線が香坂さんに向いていて良かったと思う。
 香坂さんは、元々口数が多くないのと、捲し立てる様な話し方もしないので、端的に答えていた。……大丈夫だ。なぜ俺の方が緊張しなくてはならないのかと思ったが。
 
 その後、彼女達も悪のりしたのか、それとも酒の席で女性同士とあれば込み入った質問をするものなのか。香坂さんの見た目からのイメージに起因するものならば、良くないイメージが払拭出切るのではないかと、止める事が遅れてしまった。
 
 “恋人は?”の質問に
 「私はあんまり恋愛経験がないので」
 香坂さんはそう前置きした後でこう言った。

「はい、12人くらいです。たぶん……」

 恋愛経験がないと言っておいて12人。少ないという認識なの……か?

全員が同じ様に呆気に取られる様に固まった。

「えー、ああ。彼女、あんまり酒強くないから、話し半分に聞いといて」
そうフォローした。

「え、面白い! 聞きたい聞きたい、初体験いつ?」
「悪のりしすぎ、君達も飲み過ぎ。はい、そんな事聞かないよ」
 今度は早めに止めた。だけど、彼女は惑うことなく
 
「中学卒業してすぐ……」
 
 と、答えたのだった。