次のステップは……なんて、頭の中まで酔ったように惚けた私には聞けなかった。代わりに、彼が
「次のステップは……“二人の時は名前で呼ぶ”ってことね」
 
そんな事より、今のキスの方が、ステップは進んでいる気がしたけれど、元々順番通りではないのだから、それでいいのかもしれない。
 
「……小百合、また連絡する」彼は最後にステップ3くらいの軽いキスを私に落とすと、私に背を向けた。
 
 バタンと玄関のドアが閉まる音がして、彼の歩く音が次第に遠ざかって行った。
 
「……さ、小百合って呼んだ、小百合って呼んだよ……」
好きな人に名前を呼ばれるのって、こんなに胸がぎゅってなるものなの?思い出しては息が切れる。
 
違った。全然、ぜんっぜん違った。私の知ってるキスとは。映画とかでずいぶん長いキスだなと思ったことがあったけれど……どうなってるのかはわからなかった、あれだ。
 
いつもの彼と、全然……違った。以前はそんな相手に、妙に自分が冷めていくのがわかったし、すぐに顔を背けてしまったのに、むしろ……逆に、全然冷静でいられなくて、どんどん熱くなっていった。今も体が、顔が熱い。こんな自分も初めて知った。
 
この先……どうなってしまうのだろう。彼の為に買ったふわふわのクッションをぎゅっと抱いて顔を埋めた。