触ったらダメだって言われたのだから、触らなければ良かったのに。子供心に、そう思った。

 プリンセス絵本を読んでも、私はなぜか、“プリンセス”になりたいと思ったことはなかった。

 お姫様のまわりの人はどう思っていたのかな、そんなことばかりを考えた。シンデレラは、苦労した時があったからこそ報われたのだろうか。

 優しさに囲まれて、言いつけも守らずに、まわりの人を巻き込んで、目が覚めたら、目の前に理想の王子様がいる。そんな眠り姫に、私は腹立ちさえ覚える。

 幸せってなんだろう。

 こんなひねくれた私に、王子様なんて来てくれるはずはない。来てくれたとしても、まわりが見えなくなるくらい夢中になれるのだろうか。突然キスされるよりも、私は、普通の出会いがいい。

 例えば、クラスメイトとか。習い事が一緒だったとか。たまたま、毎日同じ電車で通学していたとか。同じクラブ、同じサークル。大人になれば、社内恋愛とか。

 少しづつ育んで、大したバックボーンなんて知らなくて、それでもその人に
自然に恋をする。

 そんな恋がしたい。そんな、普通の恋がしてみたかった。

 だから、普通のOLにも……憧れていたのだ。