「そっか、とうとう貴裕さんは……」

 彼が会社を継いだということは、安藤さんと結婚したということだ。

 今度こそ私は、彼への未練をきっぱりと断ち切らなくてはならない。

「ふにゃぁ……」

「あら、起きちゃったの」

 ベビーベッドの中で大人しく眠っていた貴斗が、小さく泣き声を上げる。抱き上げると安心したのか、また眠ってしまった。

 これまで感じたことのない愛しさが、胸の中に込み上げてくる。

 貴斗のことは、私が守る。

 今までにないほど強い気持ちで、私はこの腕の中の小さな体を抱きしめた。