官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました

 ほどなくして、つわりが始まった。

 私はいわゆる吐きづわりで、食べてもすぐに戻してしまう。みるみるうちに体重が減って、顔色も悪く瑞季さんにも心配された。食事も喉を通らないことが多い。

 ひどい時は、スポーツドリンクなど飲んだものもすぐ戻してしまっていた。

「店長、ちょっと休んでください。これじゃ倒れちゃう」

「大丈夫大丈夫」

 不思議なことに気力だけは充実していた。それだけで、最後まで頑張れたようなものだ。

 取引先の人やお客さん達も、閉店を心から残念がってくれた。だからこそ、悔いのないお別れをしたいと思ったし、何より、お腹の子が私に活力をくれた。

 この子のために、頑張らなくちゃ。その存在が、私の支えだった。


 瑞季さんも頑張ってくれたおかげで、なんとか無事閉店の日を迎えることができた。

「店長、今までお世話になりました」

「瑞季さんも、本当にありがとうございました」

 瑞季さんはお店の仕事と並行して求職活動をして、無事次の職場を見つけることができた。

「新しいお店にも顔を出しますね」

「嬉しい! こっそりサービスしちゃう」

 次の職場は大手のホテルや結婚式場と契約しているフラワーショップで、花嫁のブーケや結婚式場の装花も手掛けているという。

 さらに経験を積んで、いつか自分のお店を持つのが瑞季さんの夢だと閉店作業の合間に話してくれた。