官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました

「相談もなく閉店を決めちゃうなんてひどい」

「すみません、店長なのに、何の力にもなれなくて」

「そんな、店長は何も悪くないじゃないですか!」

 自分だって職を失うのに、瑞季さんは私を責めたりしなかった。

「店長は、これからどうするんですか」

「……どうしらいいんだろう」

 子供を産むにしろ育てるにしろ、お金がいる。今仕事を失うのは、かなりの痛手だ。

 すぐに就職活動をするにしても、出産を控えた、しかも未婚で身寄りもない人間を雇おうなんて会社があるだろうか。雇ってもすぐに産休に入るのに? そんな会社、どう考えたってあるわけがない。

 だからって、手を止めるわけにもいかない。

 閉店の周知に取引のある業者さんへの連絡、お得意さまへの挨拶に店内の片付け。閉店までにやらなきゃいけないことは山のようにある。

 今まで築き上げてきたものがあるからこそ、どの作業も手を抜くわけにはいかなかった。