官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました

 オーナーは五十代半ばの女性だ。仕事と家庭を両立しながら、フラワーショップを経営し、今では都内に五店舗を構えるまで成長させた、やり手の実業家だ。

 きっと私の境遇に共感してもらえる部分もある。そう思っていたけれど、自分がいかに甘かったか思い知らされることとなった。

「ごめん、美海ちゃん。突然で申し訳ないのだけれど、この店舗今月いっぱいで閉めることにしたの」

 妊娠のことをオーナーに話そうとアポイントの電話をかけた翌日、オーナーは私を見るなり頭を下げた。

「……そんな、どういうことですか?」

 どんなに食い下がっても理由は言えないの一点張り。閉店はもう決まったことで、私がどう頑張ったところで翻るものではなかった。

「それじゃ、私と瑞季さんは」

「本当に申し訳ないのだけれど、辞めてもらうことになるわ」

 私はともかく、瑞季さんだけでもどこかの店舗で雇ってもらえないかと頼み込んだけれど、それも難しいとの返事だった。

 退職金はきちんと払うから、とそこばかりを強調して、オーナーは逃げるように帰って行った。