スマホのアラームの音で目が覚めた。

 貴斗が起きてしまわないよう、慌ててアラームをオフにする。私の体にはタオルケットが掛けられていた。

「……貴裕さん?」

 隣で寝ていたはずの貴裕さんがいない。和室を出ると、台所から何やら物音がする。ガラスがはめ込まれた引き戸を開けると、貴裕さんがガス台の前に立っていた。

「美海。起きたのか」

「うん、貴裕さん何してるの?」

「ごめん、勝手に使わせてもらってる」

 ガス台に近づくと、貴裕さんはフライパンを握っていて、綺麗に焼けた目玉焼きが二つと、不格好に黄身が潰れてしまったものがひとつ、じゅうじゅうと音を立てていた。

「貴裕さん料理できたの?」

「できるといいたいところだけど、これが精一杯だった。あ、米は炊いた」

 お皿にはところどころ焦げたウインナーも入っている。冷蔵庫にある在り合わせのもので、朝食を作ってくれたようだ。

「ごめんなさい。貴裕さんもあまり寝てないのに」

「いや、いいんだ。もっと色々作れたらよかったんだけど……」

「ううん、十分よ。でも、貴斗はまだ本調子じゃないだろうし、もうちょっと消化のいいものの方がいいかも」